障がい者雇用とは、民間企業、国や地方公共団体などが、健常者を雇用する一般雇用とは別に障がい者を雇用する枠として確保し、障がいのある人を雇用することです。
本記事では、障がい者雇用と一般雇用との違い、障がい者雇用に関する法律について紹介していきます。
障がい者雇用とは
障がい者雇用とは、民間企業、国や地方公共団体などが、健常者を雇用する一般雇用とは別に障がい者を雇用する枠として確保し、障がいのある人を雇用することです。
障がい者雇用の対象となるのは、障がい者手帳を持っている以下の人が対象となります。
障がい者を雇用することで、障がいに関係なく、個々のパフォーマンスによって、誰もが職業を通して社会参加できる「共生社会」につながります。
さらに、障がい者が能力を最大限発揮できるように職場環境を改善することは、従業員にとっても働きやすい環境の創出につながり、シナジー効果が期待できます。
一般雇用との違い
障がい者雇用と一般雇用の大きな違いは、障がいへの配慮の有無です。
例えば、以下のようなものがあります。
- 身体障がいに配慮して通勤ラッシュを避けた出勤時間
- 知的障がいに配慮して可視化されたマニュアルの作成
- 精神疾患に配慮した短時間労働やこまめな休憩時間の設定
また、障がい者雇用で就職する場合は、行政からの支援制度も受けられます。
障がい者雇用促進法について
障がい者雇用に関する法律として、障がい者雇用促進法があります。
障がい者雇用促進法では、障がい者の自立を実現するための職業リハビリテーション推進や雇用主の差別の禁止、合理的配慮の提供義務などを定めています。
法定雇用率
障がい者雇用促進法では、法定雇用率が決められています。
法定雇用率は、民間企業で、2.2%と定められています。
法定雇用率を達成している企業の割合は、45.9 %となっています。
法定雇用率を下回った場合
法定雇用率を下回った場合、納付金を収める必要があります。
納付金は、常時雇用している労働者数が100人を超える事業主が対象です。
障がい者雇用率が未達成の場合、法定雇用障がい者数に不足する障がい者数に応じて1人につき月額5万円の障がい者雇用納付金を納付しなければなりません。
徴収された納付金は、以下の支給に使用されます。
- 障がい者雇用調整金
- 報奨金
- 在宅就業障がい者特例調整金
- 在宅就業障がい者特例報奨金及び各種助成金
障がい者を雇用することは、事業者が共同して果たしていくべきであるという考えから、障がい者雇用納付金の制度があります。
障がいの種類
障がい者雇用を進めていくに当たって、さまざまな種類の障がいについて知っておくべき必要があります。
現在障がい者雇用の対象となっているのは、身体障がい、知的障がい、精神障がいの3つですが、それぞれどのような障がいなのでしょうか。
それぞれ詳しく紹介していきます。
身体障がい
身体障がいとは、身体機能に障がいが生じている障がいです。
身体障がいは、身体障がい者福祉法で大きく以下の5つに分類されています。
- 視覚障がい
- 聴覚・平衡機能障がい
- 音声・言語・そしゃく機能障がい
- 肢体不自由
- 内臓機能などの疾患による内部障がい
また、障がいにはそれぞれ等級が設定されています。
知的障がい
知的障がいは、知的機能の発育に遅れがみられる障がいのことです。
知的機能としては、記憶や判断、知覚などが挙げられます。
知的障がいの判断は、行政施策上では知能指数で判定されており、知能指数75以下の場合に知的障がいと判定されています。
知的障がいは個人差が大きいため、採用を進めていく段階から、本人だけでなく保護者や支援機関の担当者などから生活状況のヒアリングを行い、採用後の業務を決めていく必要があります。
精神障がい
精神障がいは、精神疾患のために精神機能に障がいが生じる障がいのことを指します。
さまざまな精神機能に障がいが生じるため、精神が正常に働かないことや行動に異常が出現するなどの特徴があります。
このような特徴が確認できた場合に、精神障がいと認められます。
精神障がいは、大きく3つに分類されます。
- 外因性精神疾患(外傷や疾患、薬物などの影響)
- 心因性精神疾患(心理的ストレス)
- 内因性精神疾患(原因がはっきりしない精神症状)
精神疾患と言っても、種類がさまざまあり、以下のような症状が挙げられます。
- 統合失調症
- うつ病
- 躁うつ病
- 発達障がい
精神障がいの方は、緊張状態でいると心身ともに疲れやすいため、採用後仕事に慣れるまでは、休憩の回数を増やす、労働時間を短くするなどの配慮を行いましょう。
障がい者雇用の準備について
障がい者を受け入れるためには、どのような準備をしておく必要があるのでしょうか。
準備をする前に、障がいのある人が職場で働く上で不安に感じるポイントをご紹介します。
- 仕事に対する不安
- 周りの視線や将来に対する不安
- 金銭面や体調面での不安
障がいのある人が職場で働く上で不安に感じることを解消できるような準備が必要です。
仕事に対する不安は、以下のような準備を行っておきましょう。
- 作業内容を具体的に伝える
- 不明点があった場合、誰に聞けばいいかを明確にしておく
- 受け入れ部署で受け入れのための研修を行う
一方で、将来に対する不安や金銭面などの不安に対しては、企業だけでは対応できない部分が大きくなってしまいます。
そのため、支援機関やご家族と連携しながら、対処していくことが重要です。
障がい者本人だけでなく、人事担当や受け入れ部署の従業員の負担とならないようサポートが必要となります。
さいごに
本記事では、障がい者雇用と一般雇用との違いや障がい者雇用に関する法律、障がいの種類などについて解説してきました。
障がい者雇用と一口でいっても、障がいの種類などによって個人差があります。そのため、どのような障がいを持った方を採用するのか、どのような業務を依頼するのか、採用後のフォローをどうするのか、などを事前に決めておくことが非常に重要です。
障がい者雇用枠は、障がいの有無に関わらず、就職で不利にならないように、障がいを持った方でも働く機会を得るために用意されている枠です。